日頃から多くの方のパソコン修理・サポートをさせていただいている、パソコンヘルパーの萩尾です。
「パソコンの動作が遅い」「買ってすぐに後悔した」—このようなご相談は、実は購入時のスペック選びの失敗に起因することが非常に多いです。特に、家電量販店の複雑な値札を前に、「どれを選べばいいか分からない」「店員さんの言われるがままに買ってしまった」というお客様の声は尽きません。
この度、OSがWindows 11へと移行したことで、パソコン選びの基準はさらにシビアになっています。一見安く見えるパソコンでも、中身のスペックが不十分だと、すぐに動作が重くなり、結果的に「安物買いの銭失い」になりかねません。
本記事では、お客様の一般的な利用目的(ウェブ閲覧、メール、Word/Excel、年賀状作成、YouTube視聴など)を想定し、Windows 11を快適に動かすために、家電量販店の値札で最低限確認すべき6つの重要要素を、パソコン修理のプロの視点から解説します。
この6つのポイントさえ押さえれば、店員さんのセールストークに惑わされることなく、本当に必要な性能のパソコンを賢く選ぶことができるはずです。
OS(オペレーティングシステム):Windows 11が「標準」の時代へ
OSとは、パソコンの基本となるソフトウェアのことです。現在、家電量販店で販売されている新品のパソコンは、ほとんどがWindows 11またはMac(Apple製品)のどちらかを搭載しています。
もし、あなたがWindows環境で作業を行うことを想定しているなら、迷わず「Windows 11 Home」または「Windows 11 Pro」が搭載されているモデルを選んでください。
Windows 11は、セキュリティや機能面で大幅に進化していますが、旧OSであるWindows 10とは異なり、CPUやセキュリティチップ(TPM 2.0)に関する厳しいハードウェア要件があります。古い設計のパソコンや、スペックを極端に落とした安価なモデルでは、たとえWindows 10が動作していてもWindows 11へのアップデートができないケースが発生します。
しかし、現在店頭に並んでいる「Windows 11搭載」と明記された新品モデルは、この要件を満たしていますので、安心して選ぶことができます。Macを選ぶ明確な理由(iPhone/iPadとの連携を重視、特定のクリエイティブ作業など)がない限りは、互換性や普及率の高いWindows 11搭載機が、大多数のユーザーにとって最も適した選択肢となります。
CPU(中央演算処理装置):パソコンの「頭脳」の妥協は禁物
CPUは、パソコンの性能を決定づける「頭脳」です。この性能が低いと、すべての作業が遅くなり、ストレスの原因となります。Windows 11は、Windows 10よりも新しいアーキテクチャとマルチタスク処理に最適化されているため、CPUの性能は特に重要です。
❌ 絶対に避けるべきCPU(下位ランク)
- Intel Celeron / Pentium
- AMD Athlon
これらのCPUは、価格の安さが魅力ですが、Windows 11を快適に動かすには処理能力が圧倒的に不足しています。特に、複数のアプリを同時に起動したり、ウェブブラウザで多くのタブを開いたりすると、すぐにフリーズや大幅な動作遅延が発生し、後悔の原因となります。修理の現場でも、動作遅延の原因の多くは、この下位CPUによるものです。
✅ 推奨すべきCPU(中位ランク以上)
- Intel Core i5
- AMD Ryzen 5
一般的な利用目的であれば、「Core i5」または「Ryzen 5」を搭載したモデルが最もバランスが取れています。処理速度が速く、Windows 11の各種機能やセキュリティ処理、そして日常のマルチタスクをスムーズにこなすだけの十分なパワーを持っています。
予算に余裕があるなら、さらに高性能なCore i7やRyzen 7を選べば、将来的な重い作業にも対応できますが、一般的な用途では「5」ランクで必要十分です。最悪の場合でも、Core i3やRyzen 3は許容範囲ですが、長く快適に使いたいなら「5」を強くお勧めします。
メモリ(RAM):作業効率を決める「机の広さ」
メモリは、CPUが作業を行うための「机の広さ」に例えられます。机が広いほど、資料(アプリやデータ)を広げてスムーズに作業できます。Windows 11は、OS自体がより多くのメモリを使用するため、この「机の広さ」はWindows 10時代よりも重要度が増しています。
❌ Windows 11で避けるべきメモリ容量
- 4GB
4GBでは、OSを起動しただけでメモリの大半が消費され、ウェブブラウザを少し開くだけで動作が不安定になります。これは、現代のWindows 11環境では最低基準に達していないと考えてください。
✅ Windows 11で推奨されるメモリ容量
- 8GB (最低限必須)
- 16GB (強く推奨)
現在の標準は8GBです。一般的な利用目的であれば、8GBで大きなストレスなく作業できます。しかし、複数のアプリを同時に使用する、Chromeなどのブラウザで多くのタブを開く、オンライン会議をしながら資料を操作するなど、現代的なマルチタスクを行う場合は、16GBを選ぶことで、体感速度と作業効率が劇的に向上します。
メモリは、購入後に増設が難しい(または高コストになる)モデルが多いため、購入時に余裕を持った容量を選ぶことが、将来の快適性への投資となります。
ストレージ(SSD/HDD):動作速度を決定づける最重要ポイント
ストレージは、ファイルやOS自体を保存する「倉庫」です。ここが、家電量販店の値札を見る上で最も注意すべき、かつ後悔する人が多い要素です。
ストレージには主に以下の2種類があります。
| 種類 | SSD (Solid State Drive) | HDD (Hard Disk Drive) |
| 特徴 | 半導体チップを使用。読み書き速度が非常に速い。耐衝撃性、静音性に優れる。 | 磁気ディスクを使用。読み書き速度が非常に遅い。安価だが故障しやすい。 |
❌ 絶対に選んではいけない構成
- HDD(ハードディスク)のみ搭載のモデル
動画でも強調されている通り、HDDのみ搭載のWindows 11 PCは絶対に選んではいけません。Windows 11は、HDDの低速な読み書き速度ではOSの起動やアプリの立ち上げに途方もない時間がかかり、フリーズしているかのように感じられます。価格に釣られてHDDモデルを選ぶと、間違いなく動作の遅さに後悔します。
✅ Windows 11時代の必須条件
- SSD(ソリッドステートドライブ)搭載が絶対条件
SSDは、Windows 11をスムーズに動かすための必須スペックです。SSDが搭載されているか、値札で必ず確認してください。最近では、さらに高速なNVMe(M.2)SSDという種類もありますが、値札に「SSD」と書かれていれば、速度の面ではまず安心です。
容量の目安
- 256GB:一般的なユーザーには十分な容量です。ファイルや写真が少ない方、クラウドストレージをメインに使う方におすすめです。
- 512GB:写真や動画の保存が多い方、たくさんのソフトウェアをインストールしたい方には、余裕を持って使える容量です。
もし、容量が足りなくなっても、外付けHDDやクラウドサービスで追加できるため、まずはSSDが搭載されていることを最優先にしてください。
Office ソフト:あなたの利用目的を再確認
WordやExcelなどのOfficeソフトは、パソコンの用途によって必要か不要かが分かれます。このソフトの有無だけで、購入価格が数万円変わることがありますので、ご自身の利用目的を明確にしましょう。
💡 Officeソフトが「不要」なケース
- WordやExcelを一切使わない。
- すでに「Microsoft 365 Personal/Family」の月額・年額契約をしている。
- 互換性ソフト(Googleドキュメント、LibreOfficeなど)で十分。
💡 Officeソフトが「必要」なケース
- 仕事や学業でWord/Excelのファイルを頻繁にやり取りする。
- Microsoft Officeとの「完全な互換性」を求める。
Officeソフトの賢い選び方
- Microsoft純正を選ぶ:互換性ソフト(WPS Officeなど)でも利用は可能ですが、複雑なファイルやレイアウトの再現性でトラブルが起こる可能性があります。仕事で使うなら、Microsoft Office製品が搭載されているモデルを選びましょう。
- Home & Businessの必要性:Microsoft Officeには「Personal」と「Home & Business」などの種類があります。大きな違いはPowerPoint(プレゼンテーションソフト)が付属しているかどうかです。
- Personal:Word, Excel, Outlookのみ。PowerPointが不要な方。
- Home & Business:Word, Excel, Outlook, PowerPointが付属。プレゼン資料を作成する方はこちらを選びましょう。
不要なOfficeソフトのために数万円を支払わないよう、値札をよく確認し、ご自身の用途に合ったエディションを選んでください。
光学ドライブ:使用頻度で「内蔵」か「外付け」を判断
光学ドライブは、CD、DVD、Blu-rayディスクなどを読み書きするための装置です。最近のノートパソコンは薄型化が進んでいるため、内蔵されていないモデルが増えています。
💡 光学ドライブが「不要」なケース
- 音楽はサブスクリプション(Spotifyなど)を利用している。
- 映画は配信サービス(Netflix、Amazon Primeなど)で視聴している。
- ソフトのインストールはインターネットから行う。
- 年に数回程度しかCD/DVDを使わない。
💡 光学ドライブが「必要」なケース
- 手持ちのCDやDVDを頻繁に再生・取り込みたい。
- 毎日決まった場所でディスクを利用する作業がある。
賢い判断方法
使用頻度が極めて少ないのであれば、光学ドライブ非搭載のスタイリッシュな薄型PCを選び、必要なときだけUSBで接続できる**外付けの光学ドライブ(数千円で購入可能)**を別途購入するのが最も賢い選択です。
逆に、ほぼ毎日使用するヘビーユーザーの方は、内蔵型のドライブが搭載されたモデルを選んだ方が、配線もなく便利に利用できます。Blu-rayディスクを再生したい場合は、「Blu-ray Discドライブ」と明記されたモデルを選びましょう。
まとめ:プロが推奨する「Windows 11快適スペック」構成
最後に、ここまでの6つの要素を踏まえた、一般的な利用目的で後悔しないWindows 11パソコンを選ぶための最適なスペック構成をまとめます。
| 要素 | 最低限必須スペック | パソコン修理屋が推奨するスペック |
| OS | Windows 11 Home | Windows 11 Home |
| CPU | Core i3 / Ryzen 3 | Core i5 / Ryzen 5以上 |
| メモリ | 8GB | 16GB (特に推奨) |
| ストレージ | SSD 256GB | SSD 512GB |
| Office | 必要に応じて選択 | ご自身の用途に合わせて Microsoft Office を選択 |
| 光学D | 外付けで対応可能 | 使用頻度により 内蔵 か 外付け を選択 |
特に、CPUはCore i5以上、そしてストレージはSSDという組み合わせは、Windows 11を快適に動かすための「黄金律」です。
家電量販店で、上記のスペックを満たしながら、あなたの予算とデザインに合った一台を選んでください。
我々パソコン修理屋は、スペック不足による動作の遅延や、HDDモデルの故障でデータを失ってしまうといったトラブルを数多く見てきました。購入時に少しだけ予算を足してCore i5とSSDを選ぶことが、数年後の快適性と、無駄な修理費用を節約することに繋がります。
この情報が、あなたの賢いWindows 11パソコン選びの一助となれば幸いです。もし、購入後の設定やデータの移行でお困りでしたら、お気軽に当パソコン修理屋にご相談ください。
【パソコンヘルパーからのお知らせ】
パソコンヘルパーでは、お客様一人ひとりのご要望を丁寧にお聞きし、価格と性能面の最適なバランスを考慮した上で、お客様にとって最も適したパソコンをご紹介させていただきます。
「どのパソコンを選べばいいか分からない」「予算内で最高のパフォーマンスのパソコンが欲しい」といったお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。お客様の快適なパソコンライフを全力でサポートいたします。



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